横浜の旧外国人居留地、関内にある
美術展示・情報アーカイブスペース

cottolink|小御門早紀 SkinMeshRenderer

information

イベント名 cottolink|小御門早紀 SkinMeshRenderer
会場 関内文庫 アクセス
開催日程 2020/3/13(金), 3/14(土), 3/15(日)
開場時間 13:00 - 18:00 *初日3/13(金)は18-20時
出品作家 cottolink, 小御門早紀

概要

美術史はエンジニアリングの歴史でもある。よく言われるのが、チューブ入り絵具の発明が印象派の成立に関係しているというストーリーだ。昔はチューブ入りの絵具などなかったので、画家はアトリエで絵具を練る必要があった。だから屋外で絵を描くことは物理的に不可能だった。だが、印象派の時代にはチューブ入りの絵具が販売されるようになっていた。それを使えば外で絵が描ける。つまり、この商品の発明によって絵の描き方(=様式)が大幅に変化したのだというのである。

今日、造形美術の制作現場と作品の様式にもっとも影響を与えている道具はコンピュータである。現代は印象派の時代よりもよほどエンジニアリングが重要な時代であると言っていい。

小御門早紀(コミカド サキ)とcottolink(コットリンク)は今回、現代もっともポピュラーで新しい視覚の形式であるCGの技術的側面と造形的側面に着目した展示を行う。小御門はエンジニアリングを、cottolinkCGの造形を専門とする。

CGの歴史はエンジニアが主導してきたが、その背後には常にビデオゲームの文化があった。ディスプレイに直接画像を表示できるシステムが開発されたのは1960年代初頭のことだが、80年代になるといわゆる「ホビーパソコン」が好事家の間で人気を博し、市販ゲームをハックしコピープロテクトの解除や改造を施した海賊版が広く流通した。するとハッカーの技術力を誇示するために海賊版の画面に「署名」を入れる行為が流行し、これがやがて「デモ」と呼ばれるオリジナルの映像作品を制作、頒布する文化を生んだ。このデモ文化は、扱える色数が少なく、処理能力も低い当時のコンピュータでリッチなアニメーションを表現するという技術的かつ芸術的なチャレンジであった。

90年代には市販ゲームを改造し、パソコン通信やインターネットなどでその改造データを頒布する「MOD」が流行した。このMODはやがてハッカー気質のメーカーによって公式にサポートされるようになり、この文化の中から多くのヒットゲームやクリエイターが生まれた。

MODをサポートしているゲームは、誰でも中身を簡単にのぞいて改変できる。一度中身をのぞいてしまったプレイヤーは、嫌でもディスプレイの中の3D世界が人の手で作られたプログラムと素材の集積であることに気付いてしまう。現代は、このようにして、「バーチャル・リアリティ」の仕組みをいくらでも知り、改変し、制作できる時代である。そこにアクセスした者が見ているのはゲームやCGアニメが見せるイリュージョンではなく、ただデータの形式と仕様のみが可視化されたツールとインターフェイスの世界である。

3Dのキャラクターはモデル(多くの場合、三角形以上の多面体=ポリゴンを無数に貼り合わせたメッシュによって立体を表現している)とスキン(モデルの表面に写真や手描きの絵を貼ってリッチな質感を表現する)、シェーダー(描画方法を定義するプログラム)、モーションデータとコリジョン(当たり判定)の定義で成り立っている。あの格闘ゲームのかっこいいキャラも、アイドルアニメのかわいいキャラも、ゲーム実況で興奮しているバーチャルYouTuberも、無数の編み目=メッシュで構成された立体の上にアジの開きのような展開図で描かれた肌=スキンが貼り付けられているわけだ。

この構造の知覚は、3Dキャラクターの解剖学の実践であるといえる。本展は、そのようなキャラクターの仕組みを技術と造形の両面から可視化する。今日、われわれが目にするイメージはもっぱらエンジニアリングのたまものなのだ。

(文・松下哲也、企画・伊藤啓太)

作家略歴

cottolink(コットリンク)

1993年生まれ。ゲンロン カオスラウンジ新芸術校第2、3期生。好きな星宮はいちご。デジ絵を描くメロンパンの皮。主な活動に、オルタナティブスペース「中央本線画廊」(2017-2019)、シンポジウム「10×10 10Global curators×10Korean curators」/国立現代美術館・韓国(2019)、『カオスラウンジ 「破滅*アフター」』A/D Gallery (2018)など。(@TsumariGracias)-Twitter

小御門 早紀(こみかど さき)

3DCGプログラマ。3DCGソフトウェア制作、巨大インスタレーション制作を行う。主なグループ展に「孤独の地図(2018)」「Ebb and Flow(2017)」。ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校3期。大阪大学大学院工学研究科修了。(komietty)-Github

作品配置図

2020_03展配置図

cottolink

C1デフォーミング・スターライト・コード #0x994c》 2020年
C2デフォーミング・スターライト・コード #0xS292》 2020年
C3デフォーミング・スターライト・コード #0x583》 2020年
C4デフォーミング・スターライト・コード #0xf83f》 2020年
C5無題/untitled》 2020年
C6無題/untitled》 2020年

小御門早紀

K1顔について #2》 2020年
K2顔について #1》 2020年
K3顔について #3》 2020年
K4存在の貧しさについて - 石の場合》 2020年
K5存在の貧しさについて - 犬の場合》 2020年
K6存在の貧しさについて - 人の場合》 2020年

360°画像

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画像ギャラリー

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