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菊池遼|香月恵介 イメージとの距離

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イベント名 菊池遼|香月恵介 イメージとの距離
会場 関内文庫 アクセス
開催日程 2019/7/19(金), 7/20(土), 7/21(日)
開場時間 13:00 - 18:00 *初日7/19(金)は18-20時
出品作家 菊池遼, 香月恵介

概要

古代ローマの博物学者プリニウスが著した『博物誌』には、古代ギリシャの画家ゼウクシスとパラシオスの絵画対決の逸話が書かれている。いずれ劣らぬ写実表現の技術を持つ両者。まずはゼウクシスがブドウの絵を披露した。すると、外を飛んでいた鳥が、その絵を本物のブドウだと勘違いして実をついばみにきた。いっぽうのパラシオスの絵にはカーテンがかかっている。鳥の目をだましたことで勝利を確信したゼウクシスは、対戦相手に「さあカーテンを引いて絵を見せよ」と要求した。ところが、そのカーテンは本物の布ではなく、パラシオスが描いた絵であった。

このようなだまし絵(トロンプ・ルイユ)の逸話は枚挙に暇がないけれども、ゼウクシスとパラシオスのエピソードが興味深いのは、その文章中に鑑賞者とイメージとの距離が描写されている点である。鳥は遠くから絵を見たからこそブドウを本物だと思い込んだのだし、人はカーテンの奥になにかのイメージが用意されているに違いないという先入観を持っているからこそ、それが絵だと気付けなかったのだ。

ふつう、絵は距離をおいて鑑賞するものだ。画家は作品のサイズや展示空間から逆算して適切な鑑賞距離を決めるし、鑑賞者は絵に近づいたり離れたりして、イメージがもっともよく見える位置を探る。このような鑑賞の作法は印刷物や映像にも利用されていて、それらメディアの場合、面積あたりのドットやピクセルの密度、すなわち「解像度」と画面サイズが適切な鑑賞距離を決定する。

メディアの規格において、鑑賞距離と解像度は反比例する。本やスマートフォンなど手元で眺める小さな画面の解像度は高く、駅の広告や映画のスクリーンなど遠くから見る大画面の解像度は低い。ところが、絵画は人が絵の具を使って描くものだから、小品だから解像度が高い、大作だから低いというような工業的な法則は成り立たない。

東洋の水墨画のようなイメージを印刷物の網点のようなドットで構成する菊池遼(キクチ リョウ)の画面も、西洋の近代絵画のイメージをディスプレイのピクセルを連想させる大きな点に分解する香月恵介(カツキ ケイスケ)の画面も、「画像」としての解像度は低い。画面を遠くから見なければ、その絵に描かれたイメージを把握することは困難だ。しかしながら両者の作品とも絵画的な情報量はきわめて多い。絵画を絵画そのものとして考察するモダニズムの観点から見れば、ごく近距離での鑑賞を想定した作りにもなっている。

プリニウスの時代は、おそらくイメージと絵画の画面が1対1の関係にあったのだろう。だから、だまし絵(トロンプ・ルイユ)が鳥や人の目をだますという逸話が書けた。では、われわれ現代人は何を基準にしてイメージとの適切な距離を測ればいいのだろうか。ハードウェアの仕様? それともデータの中身?

※本展は菊池と香月が出品した rgb+ 2017 exhibition vol.9(2017年)に取材した企画である。同展出品作のコンテクストを補完すべく、両作家の初期作品と新作を展示する。

作家略歴

菊池遼

1991年青森県生まれ。東京造形大学大学院造形研究科美術専攻領域修了。現在、同大学助手。鑑賞位置で作品の見え方が変わる視覚効果を用いて「もの」の儚さや辿り着けなさ、現象性の表現を試みる『void』シリーズなどを制作。主な展示に2019年『もの・かたり- 手繰りよせることばを超えて』(ヒルサイドフォーラム)。2019年『HELLO My name is __』(EUKARYOTE)、2017年『派生する幹 -DERIVATION from the TRUNK-』(SEZON ART GALLERY)、2017年『 無/(分節)』(Frantic Gallery)、など

香月恵介

1991年福岡県生まれ。2016年東京造形大学大学院造形研究科美術専攻領域修了。現代に於ける画像=ディスプレイの発光を絵具に物理的に置き換えた「ピクセルペインティング(pixel painting)を制作。主な個展に2018年「Les Nympheas」(EUKARYOTE)、2017年「Image in the Light」(Lower Akihabara.)。主なグループ展に2018年「NOUMENON」(TAV Gallery)、2017年「CIRCUS vol.1」(SEZON ART GALLERY)、2015年「Two Truths」(Griffin Gallery)、など

作品配置図

菊池遼

Ki1《void #41》
Ki2《void #47》
Ki3《primary scape #2》
Ki4《あいまいな存在》

香月恵介

Ka1《-scape #3》
Ka2《Undine giving the Ring to Massaniello, Fisherman of Naples 1846》
Ka3《Impression, soleil levant 1873》
Ka4《Icon 95?》
Ka5《icon》

360°画像

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画像ギャラリー

「イメージとの距離」展示風景1

「イメージとの距離」展示風景2

「イメージとの距離」展示風景3

「イメージとの距離」展示風景4

「イメージとの距離」展示風景5