information
イベント名 | 揺動PROJECTS 01 オンライン映像祭「Films From Nowhere」 | ||||||||
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会場 | Films From Nowhere(Vimeo) | ||||||||
開催日程 | 2020/3/9(月) - 3/29(日) | ||||||||
出品作家 | 荒木悠, 池添俊, 内山もにか, 海野林太郎, 木野彩子, 佐々木友輔, 地主麻衣子, 波田野州平, 渡邉ひろ子 | ||||||||
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概要
映像祭に寄せて、もしくはことの発端
2020年2月27日に掛かってきたある一本の電話。映像作家の佐々木友輔さんからだった。新型コロナウイルスの感染拡大防止対策の一環として、日本全国軒並みにあらゆるイベントが中止になっていった渦中である。その日私は京都にいて、本来であれば二日後に初日を迎えるはずの、ある舞台作品のバラシを終えたばかりだった。電話口から聴こえる、彼のいつものクールな声。しかしその奥底に潜む本映像祭への熱い想いに感銘を受け、二つ返事で協力させて欲しいと伝えた。自粛が相次ぐ状況下で、自ら場を作り出していこうとするその姿勢、またその実行力の早さに企画者でもある佐々木さんの真髄をみた気がしたのだった。
今回、私は私で、もっと作品を観る機会が欲しい、もしくはもっと多くの人に知ってもらいたいと思っている映像作家に声をかけさせてもらった。上映とは異なる環境であるにも関わらず、皆んな快く受けてくれたことがとても嬉しかった。この場を借りて深く感謝申し上げたい。やはり、機転の効いた発想には、協力者が瞬く間に集まる力が秘められているようだ。このことへの再認識は、作り手としても一条の光であった。一日も早い事態収束を願いつつ、本プログラムが少しでも皆様のいる生活空間への「潤い」となれば幸甚である。(荒木 悠)
鳥取で、続報を待ちながら
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためという大義名分のもと、多くの芸術・文化に関わるイベントが延期もしくは中止に追いやられている。現時点(2020年3月1日)では感染者の確認されていない鳥取も例外ではなく、私自身、間近に迫った新作の上映会を予定通り開催するべきかどうか、主催団体や会場、関係者たちと協議を続けているところだ。
「イベントの自粛を呼びかけ」「小中高の臨時休校を要請」……日々刻々と状況は変化していき、ジリジリとした気持ちで続報を待つ。すでに多くの人々が語っているように、感染症自体の脅威というよりも政府の「やってる感」演出に右往左往させられている感が否めない。TwitterやFacebookを開けば、全国各地の友人たちが、予定していた上映やイベントが中止になったことで行き場をなくし、嘆いたり、暇を持て余したりしていた。
オンライン映像祭を企画したのは、何よりもまず、彼らに作品を見る場所を提供したかったからだ。阪神・淡路大震災のとき、ご近所の方々に炊き出しを振る舞ってもらったことを思い出していた。食事をとらなければ生きていけないのと同じように、作品を摂取しなければ生きていけない者もいる。好き嫌いや食物アレルギーもあるから、選択肢は多いほうがいい。誰かが生き延びるために、自分の作ったものが少しでもその人の腹を満たせるなら、それはどんな地位や名声よりも誇らしいことだと思った。
早速、このような考えに賛同してくれるに違いないと直感した映像作家に声をかけた。荒木悠さんには共同企画者として、コンセプトの練り上げや作家の選定にも加わってもらった。唐突な呼びかけにもかかわらず、みなが即座に参加表明をしてくださったおかげで迅速に事が運び、おそらくもっともイベントの中止や延期が多いであろう三月に映像祭開催を間に合わせることができた。心からお礼を申し上げたい。
今回、視聴可能期間はレンタル料金の支払いから3日間(72時間)と設定している。全体の作品数が多いので、3日間ではあまりに短いと感じるかもしれないが、それはこの企画が「映像祭」であるために必要なことなのだとご理解いただきたい。ぜひ現実空間上の映画祭や映像祭の「一日通し券」を購入したつもりで、まとまった時間を設けて、目当ての作家の作品もそれ以外の作品も併せてたっぷり楽しんでいただけたらと思う。「どこでもない場所」で過ごす休日も、たまには悪くないかもしれない。 (佐々木 友輔)
作家略歴
荒木 悠(あらき ゆう)
1985年山形県生まれ。美術家・映像作家。異文化間のはざまや差異に着目した映像インスタレーションを展開している。主な個展に「RUSH HOUR」(CAI02、2019年)、「ニッポンノミヤゲ」(資生堂ギャラリー、2019年)、「LOST HIGHWAY (SWEDED)」(ボルボ スタジオ青山、2018年)、「双殻綱:第一幕」(無人島プロダクション、2017年)など。展覧会形式にとどまらず、近年では映画祭でも作品が上映されている。HP: http://www.yuaraki.com/
池添 俊(いけぞえ しゅん)
1988年香川県生まれ。個人の記憶に刻まれた物語を描くため、フィルムとデジタルを用いて新たな映画表現を模索している。中国人の継母との生活を描いた初監督映画『愛讃讃』(2018年)が第43回香港国際映画祭、第40回ぴあフィルムフェスティバルなど国内外の映画祭で上映。2作目の短編『朝の夢』(2019年)は祖母の追憶から作成した。HP: https://shunikezoe.com/
内山 もにか(うちやま もにか)
1987年東京都生まれ。ペンシルベニア大学で美術学修士取得。現在はニューヨークでアーティスト・映像作家として活動している。映像作品はアート・オブ・ザ・リアル映画祭(2019年)、日本アバンギャルド映画祭(2019年)などで上映された他、ICAフィラデルフィアやゲーテ・インスティトゥート北京でのグループ展などでも発表されている
海野 林太郎(うんの りんたろう)
1992年東京生まれ。 美術作家、マテリアルショップ・カタルシスの岸辺 運営者。主な展覧会に「風景の反撃 / 執着的探訪」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、2019年)、「TOKYO2021 un/real engine ―― 慰霊のエンジニアリング」(カタルシスの岸辺、戸田建設本社ビル、2019年)、 「サスペンデッド・エクスプローラー!」(EUKARYOTE、2018年)など。ミュージックビデオ 長谷川白紙「草木」監督
木野 彩子(きの さいこ)
札幌生まれ。踊子。日韓英仏様々な地を踊り渡って鳥取在住。主な作品に『Edge』、『箱女』、『IchI』、『かめりあ』、『Mobius』、『死者の書再読』、レクチャーパフォーマンス『ダンスハ體育ナリ?』シリーズなど。映像プロジェクトとして『Amanogawaプロジェクト』。近年は『鳥取夏至祭』や『鳥取銀河鉄道祭』などの企画・運営も行っている。HP: https://saikokino.jimdofree.com/
佐々木 友輔(ささき ゆうすけ)
1985年兵庫県生まれ。映像作家、企画者。主な長編映画に『映画愛の現在』、『コールヒストリー』、『TRAILer』、『土瀝青 asphalt』、『新景カサネガフチ』。著作に「房総ユートピアの諸相──〈半島〉と〈郊外〉のあいだで」(『半島論──文学とアートによる叛乱の地勢学』所収、響文社)、「三脚とは何だったのか──映画・映像入門書の20世紀」(『ビジュアル・コミュニケーション──動画時代の文化批評』所収、南雲堂)、など
地主 麻衣子(じぬし まいこ)
1984年神奈川県生まれ。個人的な物語をテーマとしたドローイングや小説の制作から発展し、映像、インスタレーション、パフォーマンスなどを総合的に組み合わせた「新しい種類の文学」を創作する。主な個展に「欲望の音」(HAGIWARA PROJECTS、2018年)。主なグループ展に「第11回 恵比寿映像祭」(東京都写真美術館、2019年)、「表現の生態系 世界との関係をつくりかえる」(アーツ前橋、2019年)など。現在、ヤン・ファン・エイク・アカデミーに在籍中
波田野 州平(はたの しゅうへい)
1980年鳥取県生まれ。現地調査をもとに土地の歴史を掘り起こし、フィクションとドキュメンタリーが渾然となった手法で、個人の記憶から集合的記憶を導き出す作品を制作。初長編映画『TRAIL』が劇場公開される。『影の由来』が東京ドキュメンタリー映画祭で短編グランプリ受賞。鳥取県の高齢者を対象に、個人的体験の語りを映像で記録するプロジェクト『私はおぼえている』を継続中。HP: http://shuheihatano.com/
渡邉 ひろ子(わたなべ ひろこ)
1988年新潟県生まれ。2013年女子美術大学大学院美術研究科修士課程 美術専攻修了。美術家・映像作家。主に映像やインスタレーションを用いて「間にあるイメージ」を表出させるような作品を制作する。主な展覧会に「まばたきの風景」(tidepool429、2019年)、「中之条ビエンナーレ2017」(温泉口の家、2017年)、「岸壁の父母 No.3 -隣人について- その訪問の心得」(HIGURE 17-15 cas、2016年)、「蟻と魚と鳥が出会う処」(トーキョーワンダーサイト渋谷、2014年)などがある。HP: http://watanabehiroko.com/
補足
掲載情報
「週末は自宅でアート鑑賞を。岡田利規の新作や3日間限定上映会も、オンラインで見るプログラム4選」-TOKYO ART BEAT(2020年3月28日)
「リアルな場とオンライン映像祭の両方で楽しめる、映画作家・波田野州平さんが参加する作品上映会」-雛形(2020年3月19日)
「「集まれない」世界の中で -文化的に死なないために-」-冷凍都市でも死なない(2020年3月16日)
「アート界はコロナ危機にどう対応しているか(随時更新)」-TOKYO ART BEAT(2020年3月13日)
「佐々木友輔、荒木悠企画のオンライン映像祭「Films From Nowhere」が開催。相次ぐイベントの中止・延期を受け」–ウェブ版美術手帖(2020年3月8日)
出展作品
荒木悠
Ar1《YEDDO》 2019年
Ar2《ANGELO LIVES》 2014年
Ar3《Deep Search (digested version)》 2009年
池添俊
Ik1《あの人の顔を思い出せない》 2020年
Ik2《揺蕩》 2020年
Ik3《his/her》 2019年
内山もにか
Uc1《Anatomy of Dependence》 2018年
Uc2《a new use》 2018年
海野林太郎
Un1《ロング・ロングショット》 2019年
Un2《3rdトラベラー》 2018年
木野彩子、佐々木友輔
KnSs1《【補講】ダンスハ保健体育ナリ?》 2020年
佐々木友輔
Ss1《コールヒストリー》 2019年
地主麻衣子
Jn1《欲望の音》 2017年
波田野州平
Ht1《内部》 2014年 -2019年
Ht2《影の由来》 2017年
渡邉ひろ子
Wt1《蟻と魚と鳥が出会う処》 2014年